ここ3年連続で、野外中心のツアーを行っているというザ・ブーム。そういえば、一昨年、私がライブを観たのも、柏崎市のお祭会場の野外ステージだった。
今回の会場は、長岡市の国営越後丘陵公園の中の、冬はスキー場になる斜面。過去にはSMAPがライブをやったこともあって、新潟での野外ライブでは定番の会場です。
2000年に同じ会場で山崎まさよしを観たことがあって、その時の経験上「交通渋滞になるぞ」と思って早めに行ったのですが、全く渋滞無し。駐車場も公園ゲート前の一番近いエリアまで入れてしまいました。そして、公園内に入り、ライブ会場方面を眺めてみると・・・あれま、観客が少ない。多分2000人くらいだったでしょうか。普通のホールでの観客数と変わらない。「野外ライブ」=「大規模イベント」という固定観念を持っていた私は拍子抜けでした。
舞台セットも非常にシンプル。普通の野外ライブって、ステージの頭上にも鉄骨を組んで、照明機材をセットしますが、今回はステージとPAスピーカーのみで、頭上には何も無し。ステージの両サイドに、簡単なやぐらが組んであって、そこに照明がほんの数本セットされているだけで、基本的には照明機材は無し。なるほど、だから開演時間が午後3時なんだなぁ〜。これでは太陽が沈んだら、真っ暗になってしまう(笑)。
ま、大学祭の野外ステージ程度の舞台ですが、千人規模の集客力しかないザ・ブームにとっては、あれくらいの機材の量が丁度いいのでしょう。あれなら、地方の小さな野外会場でも演奏できるから、機動力もあるし。
そんな状況で登場したザ・ブームは、メンバー4人に加えて、パーカッション2名、ギター1名、キーボード1名、ホーン隊2名、女性コーラス1名という総勢11名編成。オリジナル・アルバムのツアーではないので、新旧取り混ぜての選曲で、スカ、レゲエ、沖縄、ブラジルと、これまでの音楽遍歴を全て見せつつ、原宿のホコ天で演奏していた原点も忘れない、という感じの曲目でした。
「お客さんも気張らずに、野外で気持ち良く楽しんで欲しい」というコンセプトのようで、小学生以下の子供は無料だったこともあり、普段はコンサートには縁のなさそうな家族連れもチラホラ。ツアースケジュールを見ると、「なんとか公園」でのライブが多いので、全国津々浦々、自分たちのファン以外の人達にも気楽にライブを楽しんでほしい、ということなのでしょう。
そんな姿勢の現れなのか、ステージ中盤、初期のスカナンバーの途中で、中島みゆきのプロジェクトXの主題歌を、宮沢が身をくねらせながら熱唱する(笑)というアホアホな芸も披露。そういえば、2年前のステージでは氷川きよしを歌っていたような記憶があるなぁ(笑)。あのパートは宮沢が一発芸を披露することになっているのだな。ま、あれならザ・ブームの音楽に馴染みのない家族連れのハートもゲットできるでしょう。宮沢和史、意外とアホな男でした(笑)。
去年のツアーでは森山良子の“さとうきび畑”をカバーしたそうですが、「今年も歌いたい歌ができた」と言って、宮沢とコーラスの女性で歌い始めたのが夏川りみの“涙そうそう”。沖縄系の曲がザ・ブームと相性がいいのは当然ですが、このカバーは良かったですね。
それから、去年のツアーで佐渡に行って作ったという“朱鷺”という新曲も聴かせてくれました。新潟のローカルTV局の自然保護キャンペーンみたいなCMで使われているので、新潟県民としては「企画物の匂いがするなぁ」と思ってましたが、宮沢本人が自発的に作った曲らしい。子供の頃、矢口高雄の「朱鷺」という漫画を読んで感動して以来、宮沢はずっと朱鷺に感心を持っていたのだそうです。去年初めて佐渡の朱鷺保護センターに行って、大変感激したとか。
“涙そうそう”も“朱鷺”も、民謡的とも言えるメロディーですが、そんな曲をさらりと歌いこなす山梨出身の宮沢和史、貴重な存在です。
そして、ライブのクライマックスは、やはり“島歌”。この曲が世に出て10年以上経ちますが、色あせることのない、希代の名曲だと思う。僕は、定番・お約束の曲で盛り上がるライブというのは嫌いだけど、そんな気持ちを感じさせないほど、どうしようもなくいい曲というのは存在するわけで、“島歌”はそんな1曲だ。正直、ザ・ブームというバンドはピークを既に過ぎてしまったと思うけど、“島歌”は末永く歌い継がれていくだろう。
そして、“島歌”で本編は終わりかと思ったら、ラストは新曲“僕にできるすべて”。初めて聴いたけど、これもいい曲です。「君のために僕のために 未来があるわけじゃないけど 君のために歌うことが今の僕にできるすべて」という歌詞ですが、「未来は2人のため」と脳天気に歌うのではなく、現実を見据えた宮沢の視点、私は好きです。新曲というのは、得てしてライブの盛り上がりには欠けるものですが、アーティストが今伝えたいことが一番詰まっているのが最新の曲のはず。あえて新曲をラストに持ってくる姿勢、尊敬します。
アンコールは、アルバム「OKINAWA」収録バージョンの“いいあんべい”と“風になりたい”。“いいあんべい”でのKICK THE CAN CREWのラップ・パートは、なんとドラムの栃木さんが担当。このバージョンはカッコいいです。“風になりたい”でのサンバ大会の後、2回目のアンコールはメンバー4人だけで1曲演奏してくれました。
8月には新潟のローカル音楽番組が主催するイベントで、再び同じ国営越後丘陵公園に登場することが決まったというザ・ブームですが、そのイベントってDragon Ashとか175Rとか、今時のロック・バンドばかりがブッキングされているんですよね。宮沢曰く「俺もヒップヒップと中島みゆきを融合してがんばる(笑)」とのことですが、その場でザ・ブームが浮くのは絶対確実。心配だなぁ・・・。