Daryl Hall & John Oates

JAPAN TOUR 2005 our kind of soul

2005年3月20日 東京国際フォーラム ホールA


ホール&オーツ、俺の中で復活!

 「全米で最も成功したデュオ」と言われるホール&オーツですが、実は私の中学・高校時代、プリンスと並ぶアイドルだったのでした。1984年の“BIG BAM BOOM”はレコードで買って死ぬほど聴いたし、1986年に初めてCDプレーヤーを買って、1枚目に買ってきたCDソフトは1982年作の“H2O”だったことを今でも覚えています。80年代前半に5曲の全米No.1ソングを生み出した彼らの全盛期の最後を、リアルタイムで私は体験していたわけです。
 しかし、テンプテーションズと共演した1985年の“Live At The Apollo”を最後に、彼らは低迷期に入ります。1988年に私が大学生になって、ライブにいつでも行ける身分になった時には、彼らは既に「過去の人」になっていました。とはいえ、日本で安定した人気を誇る彼らは、コンスタントに来日ツアーを行ってはいたのですが、私は観に行く機会がないまま、20年近い歳月が流れてしまいました。
 しかーし、最近の80年代ブームの中では、必ずホール&オーツの名前は出てくるし、さらにはテレビCMで彼らの歌声がお茶の間に流れるし。そして、去年リリースされたライブ・エイドのDVDの中での彼らの素晴らしい演奏! ムラムラとライブが観たくなってしまい、急遽東京まで行くことにしました。チケットはヤフオクで10列目を入手!

(懐かしのホール&オーツ本をご紹介・全てシンコーミュージック刊)

ミュージック・ライフ1985年11月号増刊

こちらは伝記本

かなりレアな歌詞対訳集

あれから20年の歳月が流れた

 会場の国際フォーラムはほぼ満員。当然ながら99%が30〜40代という客層ですが、小綺麗な大人の女性が多い。大人になっても音楽を愛する素敵なお客さん達という感じでしょうか。もちろんハゲの男性もいましたが(笑)。ともかく、80年代の懐かしアーティストが、全国9カ所のツアーを行い、5000人規模のホールを満員に出来るというのはスゴいことです。日本での人気は本当に根強い。
 そして、ステージに登場したホール&オーツを見ての第一印象は「年とったなぁ〜(笑)」。
 ま、髭を剃ったジョン・オーツはまるで別人で、「こういうオバちゃん(笑)、日本の田舎にもいるぞ」という訳の分からん感想(笑)を抱きましたが、ダリル・ホールは昔よりも太って腹も出たし、さすがに20年の歳月を感じましたねぇ。1947年生まれのダリルは既に57歳。サラリーマンなら定年間近な年齢なんだから、そりゃそうだよな。
 ホール&オーツと言えば「80年代を代表するヒットメイカー」というイメージだと思いますが、彼らのデュオとしてのデビューは1972年。個人としては60年代から活動しており、ダリルはなんとMFSBの「ソウル・トレインのテーマ」のレコーディングに参加していたらしいというから、ビートルズやストーンズにも負けないくらいの活動歴があるんですよ。
 余談ですが、高校生の頃の私は「ロック・ミュージシャン=20代」が当たり前、「ドント・トラスト・オーバー30」だと思っていたので、ホール&オーツが当時既に40歳近いと知った時はショックでしたよねぇ(笑)。「うわっ、こいつら本当はオッサンだ」と(笑)。あれから20年が経っているんだから、そりゃ彼らだって還暦になるわけだ。


素晴らしいボーカリゼーション

 見た目は変わってしまったけれど、音楽はあの頃のまま変わらない。
 バンドはシンプルにDr,B,G,Key,Saxの5人編成で、特に80年代の黄金期のバンド・メンバーだったベースのT-ボーンとサックスのチャーリー・デシャントの2人が健在なのが嬉しい。
 1曲目はいきなりの“Maneater”。1982年全米No.1ソングで、最初からファン・サービス全開ですよ(笑)。有名なあのサックス・ソロは、もちろん4拍のディレイ付き。ファンの期待を全く裏切りません。
 はっきり言って、お客さんは例外なくホール&オーツに新曲など期待していない懐かしの名曲を聴きたいわけで、新作アルバムの曲なんて邪魔なだけだ。しかし、今回のツアー・タイトルでもある新作“our kind of soul”は、ソウルの名曲のカバーアルバムなので、懐メロモードの観客にとっても違和感無し。むしろ、バンドの演奏力やダリルのボーカリストとしての実力が装飾無しで伝わってきて、非常に良かった。特に“You Are Everything”(スタイリスティックスの1971年のヒット曲。マーヴィン・ゲイ&ダイアナ・ロスのバージョンも有名)でのダリルの絶唱は本当に素晴らしかった。演奏が終わっても、しばらく観客の拍手が止まらなかったほど。

 そんなわけで、ステージは“our kind of soul”の曲と定番のヒット曲を上手いバランスでミックスしながら進んでいき、ダンサブルな“I Can't Go For That”でクライマックスを迎えました。で、ここでダリルが「日本だけ特別の曲だ」と言って演奏したのが、テレビCMで使われていた“Without you”のカバー。“our kind of soul”の日本盤にボーナス・トラックとして収録されている曲ですが、ダリルのボーカル、そしてコーラスワークに感動しつつ、本編は終了。
 そして、1回目のアンコール。来た!“Kiss On My List”と“Private Eyes”の必殺の2曲! キタ、キタ、キター!(笑)。“Private Eyes”のサビハンド・クラップに、ライブで参加する日を俺は20年間待っていたのだ(笑)。ホール&オーツのライブと言えば、これですよ、これ。
 この時点でもう私は100%満足していたのですが、さらに2回目のアンコール開始。1曲目はなんと“Out Of Touch”。これも1984年の全米No.1ソングではありますが、今回のライブの流れの中では邪魔だったなぁと思う。当時のテクノロジーを駆使した曲だから、バンドで演奏してもあまりカッコよくはならないしね。しかし、2曲目はガラっと雰囲気を変えて“You've Lost That Lovin' Feeling”をソウルフルに。ソウル・デュオとしての本領を発揮して、ライブは終わりました。


僕らの世代のスタンダード

 さて、私はここのレポートでは「定番、お約束の曲で盛り上がるライブは嫌いだ」と何度も書いています。このホール&オーツは、まさに「80年代の定番のヒット・ソングで盛り上がり、“Private Eyes”のハンド・クラップがお約束」という類のライブだったのですが、なぜか私は嫌悪感を抱きませんでした。
 かつての憧れのアーティストをついに生で観た、という意味で採点が甘くなっている面はもちろんありますが、ホール&オーツの楽曲のクオリティと、ボーカリストとしての実力の高さが、不満を感じさせなかったのだと思います。
 彼らの70年代のヒット曲“She's Gone”や“Sara Smile”は、既にソウル・クラシックオールディーズと言ってもいいくらいだし、“Kiss On My List”のキラキラするようなメロディーは、僕らの世代のスタンダードと言えるだろう。80年代のMTV的な印象が強いために、ホール&オーツはイメージ的に損をしている面があると思う。彼らがライブで70〜80年代のヒット曲をプレイするのは、ストーンズが今もライブで“Satisfaction”や“Jumpin' Jack Flash”をプレイするのと同じくらい意味があることなんだと思う。
 今回心残りだったのは“Wait For Me” と“Everytime You Go Away”が聴けなかったこと。次の来日ツアーも観に行ってしまいそうな予感がします(笑)。

 



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