公演の2週間ほど前に、突然思い立って電子チケットぴあでチケットを買ってしまいました。
多分、こんな連想の結果だったと思う。
「フジロック10周年記念で、久々に富士天神山に行ってみたいなぁ。メタモルフォーゼは確か富士山周辺で開催のはず。」
「今年は静岡かぁ。遠いなぁ。ん?今年はコノノNo.1が出演するのか。これって結構事件かも。」
「なんだ、日比谷野音でも演るのか。しかもROVOと渋さ知らズと共演!これは行くしかねぇよ!」
というわけで、「ナオンと言えばヤオンと答える」世代(笑)の私ですが、初めて日比谷野音に行ってまいりました。皇居やら帝国劇場やら帝国ホテルやら、日本の国家権力の中枢みたいな(笑)スゴい所にあるんですねぇ。
東京の天気予報は曇りだったので、念のため、フジロック用の雨具を持参。それほど暑くもなく、野外ライブには丁度いい天気。
15時開場、15時45分開演だったので、15時30分到着を目指して日比谷公園を歩いていると、野音方面からなぜかライブ演奏の音が聞こえてくる。 「えぇ、もう本番始まっているの!?」と入場口へ急ぐ。
入場してみると、渋さ知らズがサウンドチェック中。というか、フルメンバーで公開リハーサル中。こんなことなら、開場と同時に入っておけばよかった。
とりあえず、サウンドチェックが終了して、メンバーは一旦ステージから退場。しかし、数分後には客席後方に突然ホーン隊が現れて、生音で演奏を始めると同時に、白塗りダンサーも客席内に登場して、異形の舞を踊り始める。一気に観客は盛り上がりましたが、ここでなぜか司会の男性(普段はプロレスのリングアナをやっているそうな)がステージに登場し、渋さホーンズの生音演奏を無視して、出演バンドの紹介と注意事項を話し始める。なんだか無神経な舞台進行だと思いましたが、後で渋さのボーカルから「司会の人に言っておくけど、俺達サウンドチェックと本番はそんなに違わないから!」とチクリと言われてました。
渋さのライブはフジロックのグリーンステージで2回観たことがありますが、苗場だと遠くから眺めるという感じだったので、間近でじっくりと観るの初めて。
とにかく、メンバーが異常に多い。ドラム2人、ベース2人、ギターも2人。ホーン隊は約10人。ボーカル陣も3〜4人で、パーカッションとバイオリン(ROVOの勝井祐二さんは不参加)もいる。これに加えて、青いセクシードレスに青いカツラの女性ダンサー2人に、白塗りダンサーが男女2人ずつ計4人。正直、ステージに総勢何人いるのか、よく分かりません(笑)。
とにかく、色んなドラマが同時進行するステージは、どこを見たらいいのか分からないほど。美しさと醜さ、生と死、希望と絶望、エロスと清純。相反する要素がごちゃ混ぜになった世界は、一言で言えば「アングラ」で「混沌」ということになる。しかし、ひとつ筋が通っていると感じられるのが、ダンドリスト・不破大輔氏の手腕なのだろう。
これは演奏する方も観る方もハマると抜け出せなくなるなぁ。
渋さは1時間で終了し、インターバル20分ほどでROVOへセットチェンジ。場内には売店があってビールや飲み物を売っているし、一時退場もできるので、場外の屋台で焼きそばやタコ焼きを買うことも出来る。都会の真ん中でフジロック気分が味わえるとは、いい会場だ。
この日のROVOは割と大人しい演奏で、去年のフジロックでの大爆発に比べると、物足りなかった。ROVOは何度も観ているけど、たまにこういう盛り上がらない時もあるんだよね。ほとんどイスに座ったまま観てしまった。
音楽リスナー歴も長くなると、得体の知れない音楽というのには、なかなか出会わなくなってしまいますが、久々に「なんじゃこりゃ!?」と思ったのがコノノNo.1の「コンゴトロニクス」。
親指ピアノにピックアップをつけて電気化し、アンプを使って歪んだ音でプレイするという発想だけでも驚くが、これが「ロックに影響されて」とかではなく、単純に「遠くまで音を届かせるため」に自然発生したスタイルだということに唖然とする。しかも、リーダーは70歳過ぎのジイさんで、アンプやPAスピーカーも自作し、70年代からこのスタイルでコンゴで演奏を続けていたという。何なんだ、この人達は(笑)。
ステージに登場したのは親指ピアノが3人、コンガみたいなパーカッション、スネアとハイハットだけのドラマー、マリンバも演奏する女性ボーカルというメンバー。中盤と終盤では、男性2人、女性1人のダンサー3人も加わりました。親指ピアノは高音、中音、低音とパートが分かれているらしい。
コンゴから持ってきたというラッパ型スピーカーと手書きの看板がステージに置かれていましたが、アンプとドラムは普通のロックバンドと同じもの。CDの世界リリースで儲かった金で買いそろえたのか、日本でレンタルしたものなのか分かりませんが、機材面、見た目での「なんじゃこりゃ」度は大きく後退していたのが残念。リーダーのジイさんのアンプはRoland
JCで、なんとROVOの勝井祐二さんと同じ(笑)。
演奏は全くの一本調子。最初は「こりゃ、途中で飽きるかも?」と思いましたが、延々と同じグルーヴが呪術的に続くと、だんだんと気持ちよくなってくる。「曲」という概念があるのかも分からない演奏は、気がつけば30分以上続いて、やっと1回目のブレイク。この後、10分ほどの曲を演奏した後、再び30分ノンストップの演奏へ。この延々と続くグルーヴの快感は「ワシントンGO-GO」と同じ類の音楽だと思いました。
観客の中にはホイッスル持参の人が多く、会場からも勝手に演奏に参加しており、「アフリカの盆踊りで踊り狂う日本人達(笑)」とでも言うべきシュールな光景は圧巻でした。
コノノ終了後、司会の兄さんが再び登場。「彼等は英語は全く話せませんが、フランス語は分かります。“アンコール”という言葉はフランス語だから、コノノのメンバーに聞かせてあげましょう!」と観客を煽ります。
その後ろでは、アンコールに向けてのセットチェンジが進行。コノノの機材セットがステージ前面にまとめられ、ステージ後方にはROVOのツイン・ドラムセットが登場し、アンプのRoland JCがもう1台セッティングされます。
アンコールは、コノノのメンバーとROVOのドラマー2人でスタート。ツイン・ドラマーは、バシバシとポリリズムをキメるのかと思ったら、パーカッション類を中心に、コノノのメンバーの様子を伺いながら、控えめの演奏。勝井さんもバイオリンを持って登場しましたが、手探り状態で音を探している感じ。多分、リハ無しのぶっつけ本番セッションだったと思われます。
コノノとROVOの合体かと思ったら、渋さのホーン隊も次々とステージに現れ、コーラスとダンサー達も登場。気がつけば、3つの対バンのメンバーのほとんどがステージ上にいるという、とんでもないカオス状態になっていました。
さすがに演奏も収拾がつかなくなってきて、散漫になってきた。ダンゴ状態の音の中にスペースを見つけられない勝井さんは、既にバイオリンの演奏を止めている。
ここで、ダンドリスト・不破大輔氏が登場し、指でカウントをコノノのリズム隊に示して、演奏を終わらせようとします。しかし、コノノのメンバーには意図が伝わらず、失敗(笑)。不破氏はもう一度チャレンジしますが、やはり演奏は止まらない。
着地点が見えず、迷走状態に入ったところで、突然コノノのリズム隊が、自分たちのタイミングで強制終了。
アンコールは一見すると渋さのライブのような感じでしたが、そんな場の雰囲気はコノノには関係なし。コンゴ人、なかなか手強い人種だぜ(笑)。