久保田利伸

Mo' Bounce To The Ounce

2003年4月25日 新潟県民会館


追悼・ROGER

 「Mo' Bounce To The Ounce」というツアー・タイトルで何も感じない人は、久保田のライブを見る資格がない、なんて言ったら、久保田ファンに怒られるか・・・
 一応説明しておくと、ZAPPというオハイオ出身の偉大なファンク・バンドがありまして、その代表曲が“More Bounce To The Ounce”。ZAPPのリーダーのROGERという人は、ファンク好きなら嫌いな人はいない!というくらい、全世界のファンク・ファンに愛されていた人だったのですが、4年前にバンドメンバーでもある兄弟に射殺されてしまったのです。その経緯とファンの悲しみの大きさは、Dayton Projectのサイトを見てほしいのですが、もちろん、大のファンク・ファンの久保田にとっても、ROGERの死は大変なショックだったはず。今回のツアータイトルには、当然「ROGER追悼」の思いが込められているわけです。そして、4月25日は、偶然にもROGERの4回目の命日でした・・・


開演前のSEはもちろんZAPP

 久保田の国内ツアーは約2年ぶり。この間に“United Flow”という日本語アルバムと“THE BADDEST 3”というベストアルバムをリリースしていますが、今回は“THE BADDEST 3”のツアーとしての意味合いが強かったようです。
 前回のツアー同様、ステージ上のDJが開演前のSEを流していて、ソウル・ファンク系のレコードを何枚もプレイし、P-Funkの“Flash Light”の後に繋いだのが、ZAPPの“More Bounce To The Ounce”。当然これが開演の合図で、ステージにバンドメンバーが登場。
 メンバーは、Dr,B,G,Key×2,DJ,Cho×4にダンサー2人。ギターとキーボードはお馴染みの羽田一郎柿崎洋一郎で、それ以外は全員外人。2年前のツアーと大部分のメンバーは同じだったような気がする。特にコーラスの女性3人と男性1人は、かなり強力。中盤、久保田抜きでマービン・ゲイの“What's Goin'On”をカバーしていましたが、どう考えても久保田よりも歌が上手かった(笑)。


久保田の全盛期とは

 1曲目の“SOUL BANGIN'”の後は、なんと“Shake It Paradise”。う〜ん、あり得ない選曲だ(笑)。アレンジも原曲のままで懐かしいけど、それはないんじゃないかという気持ちになっていると、3曲目は“Indigo Walts”。
 結局、久保田の全盛期は“Shake It Paradise”から“Such A Funky Thang”までの3枚のアルバムなんだなぁと実感したのでした。私は久保田のアルバムは全部持っているけど、“Neptune”以降の曲は、聞き覚えはあっても、曲名は全く分からない。終演後のロビーに曲目が掲示されていたので、「1曲目って“SOUL BANGIN'”って曲なんだ」と分かったけど。
 久保田がMCで「この曲はボーカルとコーラスがユニゾンで日本語を歌うので、外人コーラスを使うようになってから10年間くらい演奏していなかった」と紹介したのが、2ndアルバムの“永遠の翼”。観客が一番沸いたのは、この“永遠の翼”と“LA・LA・LA LOVE SONG”でした。
 ま、渡米して、日本で話題にならなくなった1996年に“LA・LA・LA LOVE SONG”の特大ヒットを放ったんだから、久保田の才能はやっぱりスゴイなと思うけど、観客の年齢層と反応を見ていると、“Shake It Paradise”世代がそのまま年をとっているだけ(自分もそうだけど)で、新しいファンはついていないことがよく分かる。


TIME シャワーに射たれて?

 高齢化しつつあるファンに合わせてなのか、アップテンポの曲を2曲くらい演ったら、スローを1曲という感じで、久保田のライブにしては珍しく、座って聴くことが多かったです。いわゆる「ファンキー」な曲はあまりなくて、ライブのクライマックスは、電波少年の朋友テーマソングだった“AHHHHH!”と“LA・LA・LA LOVE SONG”。
 そして、アンコールは、バンドメンバーだけで“More Bounce To The Ounce”をカバー(もちろん柿崎洋一郎氏はトーキング・モジュレーターを使用)し、ゴスペル的な盛り上がりに移行した後、久保田が登場して“TIME シャワーに射たれて”へ。
 う〜ん、久保田のアンコールと言えば、もちろん“TIME シャワーに射たれて”以外はあり得ないんだけど、15年前の曲をそのままのアレンジで演奏されてもちょっとなぁ、と私なんかは思ってしまう。あの曲は日本語ラップの草分け的な価値はあると思うけど、今の時代に演るのは時代錯誤というか、本人も恥ずかしいのではないだろうか?
 前回のツアーは、Toshi KubotaとしてのR&B系の曲をメインにしつつ、日本の久保田利伸としての曲で盛り上げる、という構成だったので、その落差がかなり激しかったのですが、今回は日本のポップスターとして割り切った感じのライブでした。とはいえ、“流星のサドル”も“TAWAWAヒットパレード”も無かったので、そういう意味では物足りなかった。どうせなら、“Oh, What A Night!”も恒例の会場を3つに分けてのGO-GOダンス大会も演って、グレイテスト・ヒッツ・ライブにしてしまえば、往年のファンは大喜びだと思いますが、そこまで後ろ向きなライブをやるほど久保田は老けてはいない、ということですな。
 しかし、久しぶりに“永遠の翼”を聴いて、本場仕込みのR&Bサウンドもいいけど、久保田のメロディーメイカーとしての才能の凄さを再確認しました。“永遠の翼”も“Indigo Walts”もSMAPケミストリーが歌えば、大ヒット確実でしょ?
 久保田は、黒人音楽を日本のお茶の間にまで広めた最大の功労者だし、コネ無しでアメリカR&B界に挑戦して、全米デビューを果たしたんだから、そのスピリットは本当に素晴らしい。でも、日本に戻ってきても、まだまだ作曲面で活躍できるのではないでしょうか?
 もしもアメリカでの活動が順調でないのなら、日本の恵まれた環境で、その才能を十分に発揮してほしいと思います。

 



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