今年で4回目になるテクノ系野外レイブ「メタモルフォーゼ」ですが、昨年までは富士山麓の日本ランドHOWゆうえんちで開催されていたので、あまり関心はありませんでした。しかし、今年は苗場での開催、そして今年のフジロックに出演しなかったROVOとDate Course Pentagon Royal Gardenが出演し、さらにアフリカ・バンバータ(!)が来日ということなので、参加しないわけにはいきません。「フジロッカーが見たメタモルフォーゼ」という視点でレポートします。
土曜の昼12時から翌朝の10時までというオールナイトなので、テントを友人から借りて新潟市を出発。台風が接近中ということで、夜は雨になるという予報でしたが、湯沢に到着した時点では快晴。しかし、三俣付近で小雨が降りだして気温も急低下し、苗場に到着してみると、雨雲がどんよりと山を覆い、晩秋のような肌寒さ。車を降りたお客さん達は一斉に雨具を着用していました。
|
|
|
|
苗場到着は11時半過ぎで、フジの時に比べると駐車場はガラ空きなので、開演の12時には楽勝で間に合うと思ったのですが、入場ゲート(フジと同じ位置)までが大行列。Palace of Wonderの手前からゲートまで行列というと、フジロッカーなら想像できるでしょう。
|
|
|
|
入場ゲートでテント利用料1000円を払い、チケットをリストバンドに交換してようやく入場。結局1時間は行列に並びました。
入場しての第一印象は「人が少ない!」ですね。フジロックに慣れた私には、非常に新鮮な苗場の光景でした。最終的にも1万人はいなかったような気がします。
客層は、フジのField of
Heavenに集う人達をイメージすると分かりやすいでしょうか。トランス系の人がよく着ているサイケ柄(?)のスカートやシャツを着た人をよく見たし、全体的にクラブ・ピープルな感じのオシャレな人が多かったと思います。
|
|
|
|
会場のレイアウトは、下の地図を見ればフジロッカーなら想像できるでしょう。フジのグリーンステージがメインの「SOLAR STAGE」、屋根なしのレッド・マーキーが「LUNAR STAGE」、フードエリアの入口付近でフジだとWOWOWとかのブースがある辺りに「!K7 STAGE」という3ステージ構成。
ステージは全体的にフジより小ぶりで、メインステージのSOLARがちょうどホワイトと同じくらいの大きさ、LUNARはDJ専用なのでステージ自体はかなり小さめ。!K7は丸いドーム状のテントで、骨組のパイプの中でプレイするという監獄(笑)のようなステージです。
|
|
|
|
|
|
|
|
テントエリアは、フジと同じでSOLARの後ろ半分のはずだったのですが、いつの間にかステージ前の右側のエリアもテントで埋まっていましたね。オールナイトで再入場不可とのことだったので、ほとんどの客がテント持参のようでした。レジャーシートを敷いている人がほとんどいないのが、フジとの違いですね。踊るか、テントでのんびり過ごすか、はっきりしている観客なのでしょう。
フードエリアはフジと同じスペースを使っていて、なかなかの充実度でしたが、難点はフジやWIREで見覚えのあるメシ屋ばかりが並んでいるところですね(笑)。さすがにこの夏3度目となると食べ飽きました(笑)。あと、服やアクセサリーの店も結構並んでいたところが、野外レイブっぽいですね。
|
|
|
|
|
|
|
|
フードエリアの充実度に比べると、トイレはちょっと少なかったですね。もちろんフジよりも観客数が圧倒的に少ないので、ひどい行列にはならなかったのですが、もうちょっとトイレは多く設置してもいいかも。あと、2日目にはトイレットペーパーが品切れになっていて、女性陣は苦労していたようです。
|
|
|
|
え〜、ようやく音楽面のレポートです(笑)。
2001年のフジロックのステージ上で、Dry&Heavyから脱退したベーシスト秋本武士が結成したダブ・ユニット。打ち込みによるバックトラックをミキサーがガンガンにダブ処理し、生ベースを加えるというスタイル。ノイジーかつディレイでトビまくるサウンドと腰に来る低音がいい感じでした。でも、こういう音楽性の場合、楽器のインタープレイは必要ないわけで、生ベースの必然性は別にないような?
「CDJを買ったばかりだから、雨が降らないように祈ってください」というトホホなMCで始まったDCPRGのステージ。しかし、菊池氏の最初のCDJプレイからもう鳥肌もの。ツインドラムに4人のホーン隊という大所帯のバンドを意のままに操り、即興的に曲を構成していく手法は、バンドでの演奏表現の究極の姿と言えるだろう。
1時間で3曲という長尺な演奏でしたが、あっという間でした。ラストの“港湾と歓楽街の構造”が圧巻。
SONARステージの時間が押していたため、CALMのDJはすこししか聴けませんでしたが、Organ LanguageやMusic Conceptionで聴けるような流麗なリズムが非常に心地よかったです。今回のDJ陣の中では私は一番好きです。
ご存じクルーエル・レコードの主宰者ですが、本人のミックスCDをまだ聴いたことがないので、どういうDJをするのか全く想像つきませんでした。まさかネオアコやラブ・タンバリンズ(笑)をかけるはずはなく、4つ打ち主体の普通のダンス・ミュージックでした。十分踊らせてもらったけど、そんなに個性はないかなぁ?
この人、フェラ・クティと一緒にバンドやってたんですね。全然知らなかった。当然ながら、フェラのような混沌としたグルーヴ感はない。アフリカ音楽をベースにしたジャズ・ファンクって感じでしょうか。
今年のフジロックに足りなかったものと言えば、ボアダムズ人脈ですよ。EYEちゃんと山本精一
(ROVO)は、メタモルに出ていたのね。
そんなわけで、EYEちゃんは当然「ターンテーブルを使ったノイズ一本勝負90分」なんだろうと勝手に思っていたのですが、意外や意外、普通のDJプレイだ。ディスコ・クラシックあり、ラテンありでジャンルはハチャメチャだけど、ちゃんと繋いでミックスしているよ。EYEちゃん、実はまともな人だったんだなぁ(笑)。
10年前、アシッド・ジャズの代表的アーティストだったロブ・ガリアーノのバンド。あの頃、アシッド・ジャズを聴きまくっていた私としては、ブームが去った後もちゃんと音楽活動を続けてくれていたことが嬉しい。
4人編成のバンドは打ち込みをベースに、メンバーが色々とパートを変えるフレキシブルな演奏。もちろんアシッド・ジャズではない(笑)。ロブ・ガリアーノはステージを右に左に歩き回って、客とコミュニケート。小さいステージでしたが、その分アットホームな感じで盛り上がりました。
ROVOにはやはり野外が似合う。最初は手探りのような演奏で、ちょっと煮え切らない感じがしましたが、勝井氏のバイオリンが夜空を駆け上るようなフレーズを繰り出すと、リズムにも躍動感が生まれてくる。
ツインドラムによるポリリズム表現はあまり強調されなくなり、演奏の疾走感をシンプルに追求しているような感じを受けましたが、それが彼等の現在の方向性なんでしょうか?
演奏はもちろん、映像とのコラボレーションも完璧。これこそ野外レイブでの理想的なライブなんだろうなぁ。
まぁ、アフリカ・バンバータと言われても“Planet
Rock”しか知らないんだけどさ(笑)。でも、HIP
HOP界の生き証人みたいな人ですから、見逃すわけにはいきません。
バンバータ本人は、基本的にDJに集中し、ラッパーとダンサーが盛り上げ役です。ところが、3曲目の時点で早くも観客に「ステージに上がってこい」とバンバータが話します。そうすると、客が次々に舞台に上がってしまい、多分100人以上(笑)がステージ上へ。バンバータは「ステージの真ん中を開けて、自信のある奴がダンスしろ」と指示しますが、すでに収拾不能(笑)。フジロックのイギーポップ状態ですわな。結局、日本人スタッフが「ステージの床が抜けます」ということで、客をステージから下ろしました。
しかし、全員を下ろしたわけでなく、ブレイクダンスが得意なB-BOYS & GIRLS
だけ数人ステージに残して、素人ダンス大会がスタート。いやいや、素人なんて言ったらダンサー達に失礼だな。男の子はもちろん、女の子達も相当の腕前。いきなりのステージとは思えないほど堂々としたブレイク・ダンスは頼もしかったですね。
結局、バンバータの2時間のうち、1時間はこのダンス大会で終わってしまいました。ダンス対決が面白くて、なんだかバンバータの存在を忘れてしまいそうでしたよ(笑)。この後も日本人ラッパー(名前は不明)にアカペラでラップさせたり、地元のヒップホップ界と交流しようとする姿勢がいいですね。MCで「世界に人種なんてない。Human
Race(人類)だけだ。」と言ってましたが、全くその通り。
最後には「Just
Girls!」ということで、女の子のみをステージに上げていましたが、あれはバンバータ御一行様のスケベ心なんだろうなぁ(笑)。多分、何人かの女の子はあのまま連れて行かれてしまったのでしょうねぇ。
|
|
|
|
|
|
|
|
2001年のエレクトラグライドで一度ライブを観ているんだけど、あまり記憶なし。ドラムとベースに打ち込み担当の3人組でのライブでしたが、ドラムがイマイチ。あれなら、いっそのことリズムは全部打ち込みの方がいいような気がします。
後ろのスクリーンに映る光は、VJの映像ではなく、ドラムの後ろに隠れている人がその場で鏡か何かで照明を反射させてスクリーンに映しているようでした。ハンドメイドな演出の割に効果は抜群でした。
シカゴ・ハウスの人らしいのですが、HMVで配布されていたフライヤーによると「昨年は奇抜なパフォーマンスが相当に話題を呼んだ」ということなので、どんな奇人変人なのか期待していたのですが、全然普通のDJじゃん。いや、普通どころか非常に優れたDJだよ。アゲアゲなトラックを次々にミックスして、観客を踊らせ続ける。この時のVJによる映像も秀逸で、曲に合わせたスピーディーな映像展開は、素晴らしい相乗効果を生んでいました。
メタモルフォーゼのVJ陣は、WIREやフジロックのスタッフよりもワンランク上の実力を持っているようです。
どういうわけか、DJセットだったTHE ORB。アレックス・パターソンがレコードをミックスし、サポートのミキサーがエフェクト処理を担当していたようです。シンセ機材を積み上げてのライブだと思っていたので、ちょっと肩すかしですね。
Chuck Brown & The Soul
Searchersの“We Need Some
Money”4つ打ちミックスがプレイされたことは立場上(笑)報告しないわけにはいきません。その場でミックスしていたのか、そういうリミックスが存在するのかは分かりませんが、苗場に響くChuck
Brownの歌声には感無量です。THE
ORBの本筋とは全く外れた感想ですが(笑)。
朝4時半で力尽き、テントで仮眠。
テントの底面から伝わってくる大地の冷たさに耐えられず、6時半には目が覚めてしまいました。テントから外へ出てみると、朝7時前だというのに、かなりの人数が踊っているよ。みんな、元気だなぁ・・・。
2日目も天候は不安定で、朝9時頃には通り雨が降りました。
|
|
|
|
今回は、なぜか生ビールは無くて缶ビールのみの販売。さらにフジでは持ち込み禁止のビン類(スミノフなど)も売っていました。フジのようにボランティア団体がゴミの分別・収集をしてくれるわけではないし、フードエリアにしかゴミ箱がなかったので、場内にはペットボトルやビンが散乱していました。踊っている時に放置ビンに足を取られたりしたら結構危ないよなぁ。まぁ、お客さんの年齢層が高いし、暴れ系のバンドは出演しないので、ステージにビンを投げるようなアホはいないのでしょうが、少なくともビン類は持ち込み禁止&販売禁止にした方がいいと思います。
SONAR STAGEの終演後、オーガナイザーのマユリ嬢がステージに登場。観客にゴミ拾いのボランティアを呼びかけます。ゴミが散乱してしまってから拾い集めるよりも、ゴミをちゃんと回収できるようなシステムを作った方がいいような気がするんですが・・・。ゴミ問題に関しては、フジロックには全くかないません。
|
|
|
|
フジロックに比べると、運営面のオーガナイズがイマイチという印象でしたが、音楽面では非常に充実していました。アーティストのチョイスに一本筋が通ってますよね。
フジロックの1ヶ月後というタイミングも絶妙。フジが終わると夏の楽しみも終わってしまい、来年が待ち遠しいという気分になってしまうそこの貴方(笑)、メタモルフォーゼはそんな貴方の心を癒してくれます。
来年も苗場開催でお願いしますよ、マジで。