いや〜、観に行ってしまいましたよ、Perfume。フジロック仲間の友人がファンクラブに入って、整理番号13番、14番というプラチナ・チケットを確保してくれました。
中田ヤスタカのサウンドメイクのおかげで、テクノ・ファンの間でも大人気のアイドルとは言え、ライブDVDで見ると観客はかなりオタク度が高そうだし、若干不安な気持ちで開場時間前に新潟LOTSに到着しました。
会場前には「こんなに会場に入るのか!?」というくらいの大行列が発生中。客層としては、8割のフジロッカーと2割のアキバ系アイドル・オタクという感じか。女性も若干いるので、私が普段行っているライブとそんなに変わりはない客層で、安心しました。
しかし、新潟LOTSはスタンディングでキャパ500人くらいだと思いますが、別の友人は整理番号600番台ということだったので、どうやら限界まで客を詰め込む気らしい。う〜む、大丈夫か?
整理番号順での入場なので、なんと、あっさりと最前列を確保。私はスタンディングの会場ではPAブースの前付近が定位置なのですが(なぜなら、音が一番良いから)、友人と2人で「こんなチャンスは2度とないから、このまま最前列でがんばろう!」と決断。
ま、フジロックでもヘブンやオレンジのゆる〜いアーティストだと最前列で観れることもあるけれど、こんな普通のライブハウスでの最前列は初めての体験ですよ。客入れが終わると、会場は男どもですし詰め状態で、この最前列から脱出することはもはや不可能。
「俺、こんなところにいて大丈夫なのか???」ある意味、絶望的な(笑)状況のまま、開演を待ちます。
開演前の場内SEの1曲目はニルヴァーナの“Smells Like TeenSpirit”。入場前の行列の中にニルヴァーナのTシャツを着た男がいたのは、こういう訳だったのか・・・。その後も1980〜90年代のロックな選曲が続き、ラストはガンズ&ローゼズの“Sweet Child O' Mine”。つーか、これホントにアイドルのライブかよ(笑)。
そして、ついに「あ〜ちゃん」「かしゆか」「のっち」の3人がアルバム「GAME」のジャケットと同じ衣装で登場!
1曲目はもちろん“GAME”で、ライトセーバーを持った3人は完璧なビジュアル・コンセプトととも観客を威嚇する。俺の目の前、手の届きそうな距離に「かしゆか」がいる!!
しかし・・・後ろの観客からの圧力で激しく体を押される。いや、笑い事ではないのよ。最前列前の鉄柵に直接胸を当てると肋骨が折れそうなので(マジで)、腕を鉄柵に当てて踏ん張って、必死に後ろからの圧力に堪える。
「これがアイドル・オタク達の威力なのか・・・」なんてシャア・アズナブル風の台詞を言う余裕も無い。ライブで命の危険を感じたのは、1997年の富士天神山フジロック以来だ。
ぐぐぐ苦しい〜〜〜! Perfumeオタクの皆さん、にわかファンなのに最前列にいてすみません!場違いな位置にいてすみません!だからもう後ろから押さないで〜〜〜。
こんな状態なので、目の前にいるPerfumeの姿を楽しむ余裕は全く無いです。もう自分の身を守るのに必死ですよ。
ようやくMCの時間。「かしゆかです!」「のっちです!」「あ〜ちゃんです!」「3人あわせてPerfumeです!」のお決まりのセリフも飛び出しましたが体が痛くてそんなの関係ないです(笑)。MCになっても、後ろからの圧力は全く変わらない。ステージ前の転がしのモニターまで観客に押されて動いてしまうので、Perfumeが「ちょっとずつ下がりましょう」と呼びかけて、やっと少し楽になってきた・・・。
驚いたのは、「あ〜ちゃん」のしゃべりが上手いこと。テレビでは空気が読めないキャラにしか見えないのですが、自分のタイミングで広島弁を話させると、抜群の威力を発揮する。観客とのコール&レスポンスのコントロールや話の流れの切り替えも実に絶妙。「客あしらいが上手い」と書くと、なんだか水商売みたいですが(笑)。
ま、実際、19歳の少女3人がボンテージ風の黒いスーツで踊る姿を、満員のオッサン達が見つめる光景は、かなり風俗営業的ではありますな。考えてみれば、38歳の俺にとっては娘でもおかしくない年齢なのだよなぁ。若干、自分で自分のダメ人間ぶりが心配になってきた(笑)。
やっとステージを見る余裕が出てきました。バックトラックはラップトップ出力で、舞台袖でMacBook2台がDJミキサーに入力されており、DJ(?)がKaossPadを使ってリアルタイムにエフェクトをかけていました。3人の立ち位置の後ろには大型ディスプレイが3台セットされ、VJ映像が流されていたので、もしかすると、マック2台のうち1台は映像専用機だったかもしれません。
ボーカルは基本的には口パク。あのケロ声エフェクトをリアルタイムにをかけることも可能なはずですが、やはり口パクが正解だと思う。完璧に作り込まれた中田ヤスタカのサウンドと、十分に訓練を積んできたことがよく分かるPerfumeの独特なダンス。口パクか本当に歌っているかなんて、全く問題にする気もおきない。
クラフトワークのライブにおける、ステージにはロボットのみでメンバー不在、というコンセプトをさらに拡大したのがPerfumeのライブではないだろうか?
いや〜、彼女たちはMCが長いです。ま、8割は「あ〜ちゃん」がしゃべっているわけですが(笑)。
「あ〜ちゃん」が「イタリアンで料理ごとに取り皿を出す店があるけど、そんなのいらん」という話をしている時、袖からコンサート・グッズを持った「かしゆか」が後ろをスキップして通って、思いっきり話の腰を折ったのにはマジで笑った。3人とも行動がフリー過ぎるよ。舞台監督という役職はこのツアーには存在しないのか(笑)。ちなみに「かしゆか」は野菜を全く食べられないそうで。
それにしても、ステージ上と観客との間で会話が成立しているのがスゴイ。「あ〜ちゃん」のMCに客がツッコミを入れたり、ツアースポンサーのエスキモー「ピノ」の話になると、「30箱食べても星が出ない!」と客席から訴えたり。こんなにアーティストと観客が普通に会話をするライブは初めて体験したなぁ。アキバ系のアイドルではこれが当たり前なのだろうか?
そして、MCはまだまだ続く。「グッズのアトマイザー(香水用小瓶)に自分の香水を入れて好きな人にあげよう」という話から、完全アドリブの恋愛寸劇(笑)に突入。大学1年の「あ〜ちゃん」と「のちお」の仲に、ライバルの「かしおゆたか」先生が絡んて、恋の行方はどうなるのか?というストーリー。ツアー11回で物語は完成するらしいが、あの小娘3人が本当にアドリブで寸劇を進行させるという、実にシュールな展開(笑)。何なんだ、このコーナー・・・いや、面白いけど(笑)。
結局、このMCコーナーは40分近く続きました・・・。
アドリブ寸劇の後は“ポリリズム”からライブ再開。しかし、3人が振り付けスタートの定位置についての演奏開始直前、「あ〜ちゃん」の腕が「のっち」のマイクに当たって落としてしまうトラブル発生。しかし、Perfumeの3人はそんな想定外のトラブルも勢いに変える。マイクを拾った「のっち」の「いきますよー!ポリリズム!!」というかけ声とともに“ポリリズム”のイントロが流れた瞬間には鳥肌が立った。マジで。
続いては必殺の“チョコレイト・ディスコ”。この選曲の流れは最強だ。
そして、ジューシーフルーツの“ジェニーはご機嫌ななめ”をカバーさせるあたり、Perfumeのスタッフはテクノ歌謡の何たるかをよく分かっているよなぁ。先人へのリスペクトを忘れないところが素晴らしい。
本編ラストの“Perfume”は、口パクではなく、普通に生ボーカルで歌う唯一の曲。彼女達はちゃんと普通に歌えるんですよね。でも、ボーカリストとしての強烈な個性や魅力というのは乏しいかなぁ。
アンコールに登場した3人は、アルバムのオリコン初登場1位を報告。ファンへの「本当にありがとうございます!」という言葉には苦節6年の実感がこもっていて、ちょっとジーンときた。
そして、11月の武道館2DAYSを猛烈にアピール。「あ〜ちゃん」は「半年後だから、有給とれるじゃろ!」と言ってましたが、「有給」かよ(笑)。自分達のファン層は学生ではなくオッサンのサラリーマンだと分かっているんだなぁ・・・。ま、「上司に言いました!」って叫んでる男もいたけど(笑)。
アンコール1曲目の“セラミックガール”開始前に、親指、人差し指、中指でのサインの練習。俺の後ろの客で「あ〜ちゃん」から「その指違うよ」と生声で指摘されている人がいましたが、周りからは「俺も指摘されて〜」との声多数。アホか、おまえら(笑)。
続いては、パソコンでランダムに選ばれた3曲を、3人がジャンケンして次の曲に選ぶというコーナー。「かしゆか」は“リニアモーターガール”、「あ〜ちゃん」は“ビタミンドロップ”、「のっち」は“SEVENTH HEAVEN”を割り振られました。それにしても「あ〜ちゃん」の「リニアモーターガールなんて意味分からん。SEVENTH HEAVENなんて英語だからダメ!」と他の2人をディスするMCは天才的だなぁ。結局、ジャンケンは「のっち」が勝ちました。
最後はちょっとスローな“wonder2”でチルアウト。終わってみれば2時間50分という長時間ライブでした。ま、半分はMC(笑)なので、歌っている(いや、踊っている?)実時間は1時間半くらい。
武道館で観客と会話するようなMCは無理だと思うので、大ブレイクした今となっては、アキバ・アイドル的な芸風をちょっと修正していかないとマズイかも?
結論的には、最前列で観たのは失敗でした(笑)。位置的にPAの音が届かないから中田サウンドの迫力はよく分からなかったし、そもそも踊れないし。後ろの方でじっくり楽しむべきだったかとちょっと後悔。
それにしても、観客に子供が全くいないところが気になるところ。10年前に何度も観たSPEEDのライブの客層は、メンバーと同年代の小中学生が主力で、大人の方が少なかった。やはりSPEEDのような「国民的アイドル」とはまだまだ言えないのだろう。そのSPEEDに憧れて歌手を目指した彼女達は、俺みたいなオッサン達のためのアイドルになりたかったわけではないはずだ。
本来、クラブミュージックとは非常に刹那的なもので、何年間も持続力を持つものではない。Perfumeの特徴となったケロ声エフェクトも世間はそろそろ食傷気味だろう。まもなく20歳となる彼女たちは、モーニング娘ならそろそろ卒業させられる年齢なわけで、アイドルとして活動できる時間はそう長くは残されていない。
人気急上昇という意味では、ライブハウスで彼女たちを観れるのはこれが最後だと思う。しかし、逆に来年にはブームも終わって、そもそも全国ツアーなんてできないかもしれない。
そう考えると、今まさに頂点に昇りつつあるPerfumeを至近距離で観ることができた今回のライブは、やはり貴重な体験だった。
最後に一言。俺は「のっち」派だ(笑)。