くるりが新潟に来るのはちょうど2年ぶり。その間にドラマーが脱退し、代わりにアメリカ人ドラマーのクリストファーを見つけ出すという大きな変化がありました。昨年のフジロックでの演奏が非常に良かったので、期待して久々の新潟フェイズへと向かいました。
お客さんの入りは満員ではないけれど、混雑もなく、ほどよい動員数といったところでしょうか。開演前のSEはアンダーワールドでした。
演奏は新作の“アンテナ”収録曲を中心としつつ、前作“THE WORLD IS
MINE”からも織り交ぜるバランスのいい選曲。過去のライブでのピークだった“ワンダーフォーゲル”は中盤で演奏してしまったので、「最後の盛り上げはどうするのだろう?」と一瞬心配してしまいましたが、そんな不安は今のくるりには不要。そう、彼等は新たなキラーチューン“ロックンロール”を生み出していたのでした。「さよなら、また明日、言わなきゃいけないな」と歌うこの曲こそ、ライブのピークにふさわしい。ギターのリフ一発で持っていく勢いもまた素晴らしい。
平凡なアーティストだと、新作アルバムの曲はライブ前半で片づけてしまい、後半は過去の定番曲で盛り上がる、という構成にすることが多いのですが、新作の曲で盛り上がりのピークを作れるというのは、アーティストに勢いがある証拠ですな。
そんな勢いのある演奏を支えていたのが、アメリカ人ドラマー、いやドラムセット・プレイヤーのクリストファー・マグワイヤ。いやー、この人は本当に凄い。「ドラムセット・プレイヤー」の名前の通り、「ドラムを叩く」のではなく「ドラムの音を演奏」しているという表現がふさわしい。「歌うドラム」いや「奏でるドラム」か?
ドラムセット・プレイヤーだと言っても、セッティングが複雑なわけではなく、タムもシンバルも数は少ない。ただ、ハイハットの位置がやたらと高く、シンバルの位置もちょっと変。で、曲ごとにシンバルは交換していました。また、スネアは2つ置いて叩き分けていましたね。
結構細かく叩きまくるタイプではあるんですが、音の一つ一つにきちんと隙間が感じられるのが、この人のスゴいところ。ハイハットの代わりにクラッシュシンバルで8分の刻みを入れることが多かったのですが、それでも音がダンゴ状態になることがない。また、“ワンダーフォーゲル”の16分のハイハットにもビックリした。今までに聴いたことのないような16ビートの感覚でした。
そんなわけで、私の眼はクリストファーにもう釘付け。他のメンバーは全く眼中に無かった(笑)。
「クリストファーよ、こんな極東のライブハウスで演奏している場合じゃないよ。お前は世界を相手に自分の音楽を奏でるべきだ。」と思ってしまったのが、正直なところ。
クリストファーがどういう経緯でくるりに加入することになったのか知りませんが、くるりにはオーバースペックな感じがしないでもない。特にアンコール1曲目で岸田君とベースの佐藤君が2人だけで演奏した時、それまではあまり上手いとは聞こえなかったベースが、突然グルーヴし始めた時にはハッとしました。クリストファーがいないとグルーヴが一致するということは、やはりクリストファーの演奏と他の3人の演奏が平行して走ってしまうような部分があるのでしょう。その辺は、今後バンドとしてのまとまりがもっと出てくれば解消するのかもしれませんが、今までもテクノや音響系など様々な要素を取り入れてきたくるりにとって、クリストファーのスタイルが邪魔になる日が必ず来るのではないでしょうか? この4人でのくるりは意外と短いような気がします。