最新アルバム“FAMILY”が素晴らしい出来だったスガシカオ。雑誌のインタビューで「ライブではただのファンク・オヤジバンドですから」と語っていて、生でどんな演奏をするのか非常に興味がありました。
会場の新潟フェイズは満員で、かなりの人気です。バンドでのライブは初めてのようですが、イベント(インストア・ライブか?)では新潟に来たことがあるらしい。
ライブはアルバム通り“日曜日の午後”でスタート。が、初めて見るスガシカオに客も戸惑いぎみで、今一つステージとの距離感がつかめない感じ。
バックバンドのFAMILY SUGAR は
あらきゆうこ(Dr)
中村キタロー(B)
間宮工(G)
森俊之(Key)
大滝裕子(Cho)
という今時珍しいオーソドックスな編成。全員“FAMILY”のレコーディングにも参加している。
注目はやはりベースの中村キタロー。久保田利伸&マザーアースでの活動後は、小沢健二のバックや角松敏生のアガルタにも参加していた日本を代表する変態系ファンク・ベーシスト。今回も怪しげなエフェクトのかかった音でブリブリいわせてました。ベースのラックの中にはアナログシンセ・モジュールらしき物体が見え、一応シンセ鍵盤も用意されているが、手弾きはほとんどしない。ということは、エレキベースからシンセをトリガーしてミックスしていたのか!? 怪しすぎるぞ。
コーラスの大滝裕子はザ・ブームの極東サンバツアーの時に見たような気がするし、こういうバリバリのプロ・ミュージシャンを使っていることがなんか意外でした。
で、問題はドラム。やたらと全力でドカスカいうドラムで、アルバムで聴けるしなやかな打ち込みドラムや1st
アルバムでの宮田繁男のイメージが強かった私にはなんとも違和感のあるプレイ。なんか「小技のきかないデニス・チェンバース」みたいだなぁ、と思っているうちに、ステージはアコースティック・タイムに突入。
ステージ前方にセットされたコンガを叩きにきたドラマーを見てビックリ。女じゃねーか! しかも若くてかわいいぞ!「小技のきかないデニス・チェンバース」じゃなくて「小技のきかないテリ・リン・キャリントン」だったのか。「スガ、どういう基準で選んだんだ!?」と訊きたくなるが、その真意は後で明らかになる。
で、このアコースティック・セットはとても良かった。“愛について”や“Happy
Birthday”など確か4曲演奏したはず。スガシカオのボーカルの魅力を再認識させられました。声自体にグルーヴがあるんですよね。爆笑のMCもはさみつつ、このライブのハイライトと言える演奏でした。かなり客席の雰囲気もほぐれてきた。
“ドキドキしちゃう”から普通のバンドセットに復帰。ここからファンクバンドとしての本性が現れはじめる。重いファンクビートの連発で、最初は馴染めなかったドラムが気持ち良く感じられてくる。
スガシカオの狙いがようやく見えてきた。要は「小細工抜きでとにかくファンク」ということだ。最近は黒人ファンクをどう取り入れるかを考えると、肉体的に劣る日本人としてはサンプルループだのターンテーブルだのと色々とスキルを工夫してしまうんですが、スガシカオはバンドとともにストレートにファンクに向かっていく。もちろん打ち込みも部分的には使うし(これが効果的)、技術的にはそう驚くほどのバンドではないんですが、今時こんなにストレートなファンクバンドは滅多にいないし、その心意気がいい。
1st と2nd
の両方のアルバムからまんべんなく演奏し、かなり盛り上がりました。アンコールも2回ありました。
ともかく、今もっとも私が期待している日本人アーティストなので、がんばってほしいものです。次のツアーではパーカッションやホーンも加えた大編成バンドでの演奏を希望します。