行って来ましたよ、あの石野卓球が音楽人生を賭けて(かどうかは知らないが)開催した巨大レイブ。万単位で観客を集めたこの手のイベントというと、96年のRainbow2000以来ですよね。Rainbow2000が人里離れた富士での開催だったのに対し、横浜の大都会の真ん中でこういうイベントが出来るようになったというのは、テクノやクラブ・シーンが日本のユース・カルチャーに完全に定着してきたことを示すのでしょう。
地方在住サラリーマンの私としては、横浜でしかもオールナイトというなかなか厳しい内容ですが、エポック・メイキングとなるのは間違いないイベントなので、行かないわけにはいきません。
横浜アリーナという大会場なので、普通のコンサートなら開演の2時間くらい前には開場するはずですが、今回はなんと、開場と開演が同じ20時。1万人の客がスムースに入場できるはずもなく、会場外で並んでいるうちにTOBYのプレイがスタート。私は事前に出演順をインターネットで見ていましたが、そんな事を知らない若者達は「誰が回しているんだ!?」「まさか電気じゃ!?」とあわてておりました。確かにクラブならオープンと同時にDJが音を出し始めるわけで、当たり前といえば当たり前。しかし誰もいないフロアで回しているTOBY(かなりの大物DJだぞ)は寂しくなかっただろうか(笑)。
私も入場までに30分くらいかかり、さらにTシャツを買うために物販の長蛇の列に並んでいるうちに1時間以上が経過し、結局TOBYのプレイは聴けなかった・・・
ようやくアリーナに入ってみると、DMX
クルーがプレイ中。テクノというよりエレクトロな感じ(当たり前か)で、あまり私の好みではなかった。
開場内は一応ブロック指定になってはいるものの、ブロック間は自由に移動でき、いい感じ。PAはアリーナの外周部に8カ所設置され、大迫力のサウンド。スクリーンも沢山用意され、VJが映像を操作しており、綺麗な照明とともにかなり異次元な空間を発生させていました。
3階のスタンド席はチルアウト・スペースとして開放されており、スタンドから見る1万人が踊る光景は壮観でした。しかし、この時点で既に寝ている人がいたのはどういうわけだ!?
DJステージの反対サイドにLiveステージがあり、DMX
クルーの終了と同時にTECHNASIAのライブがスタート。香港から来たこの2人組はその名前の通りアジア風味のテクノを目指しているのだろうと思いますが、中華のドラを使っている以外は一昔前のテクノという感じ。シンセを手弾きする場面が多く、「打ち込みバンド」という気もしないではない。
ライブ・アクトが終わったところで、ひと休みしようかと思ったけれど、デリック・メイのプレイが凄すぎて、踊らずにはいられない!
いや、ホントすごかった。極端な話、DJなんて他人の曲をかけているだけなのに、どうしてあんなに音に個性が出るのだろう? 4つ打ちのテクノなのに、デリック・メイのあのドス黒いグルーヴは一体何なのだろうか?
WIRE99のベスト・アクト。
今日の主役・石野卓球率いる電気グルーヴ。国内では久しぶりのライブで、しかもまりん脱退後の初ステージ。この日の観客のほとんどは電気のファンだったはず。Liveステージ前のブロックはすし詰め状態で、この時ばかりはクラブというよりライブハウスの雰囲気でした。
卓球とピエール瀧だけで演奏するかと思ったら、卓球以外にもDJらしき人物が2人。卓球とともにターンテーブルを回したり、ミックス卓をいじったりしている様子。誰かは不明。
そして、ピエール瀧が半人半馬のケンタウロスみたいな扮装で登場! 相変わらずのアホアホ・パワーが心に染みる(笑)。終盤の“虹”ではボーカルの五島良子が加わり、非常にやる気に溢れたステージでした。しかし、どうも音に迫力が無かった。DJの音とは音圧が全然違う。簡単に言えば音が小さいということになるんだけど、TECHNASIAのライブも同じ感じだったので、ライブ側のPA的な問題だったのだろうか?
本人達はかなり満足した演奏だったようですが、観客的にはちょっと残念。
電気グルーヴのライブでかなり消耗したので、ここからチルアウト。ビール飲んでスタンド席に上がり、寝てしまいました。ウェストバム、すまん!
さて、目を覚ますとマイク・ヴァン・ダイクのライブが始まっておりました。これが結構いいサウンド。電気グルーヴのライブよりはるかに音圧が高い。スクリーンに映るステージの映像を見た感じでは、TB-303やMC-505等の音源をずらっと並べてMIDIで同期させ、卓のミュートで演奏しているらしい。
マイク本人もノリノリで、いいライブでした。
深夜3時、WIRE99のクライマックスとなる卓球のプレイがスタート。割と押さえた感じというかミニマルな選曲で、ミキサーのEQを駆使した音作りはさすが。
しかし、さすがにこの時間帯はサラリーマンの体には厳しく、飲み物を求めてロビーに一旦退却してしまいました。売店も自販機も長蛇の列で、並んでいるうちに電気グルーヴの“虹”が聴こえてくるではないか! なにしろWIRE99のアンセムとなっている曲なので、あわててアリーナに戻ると、もう曲はアンダーワールドの“Rez”に変わっていた(笑)。“虹”と“Rez”をミックスしていたらしいので、卓球のプレイのハイライトを聞き逃してしまったようだ。ショック。
ラストの田中フミヤは卓球以上にミニマルなプレイ。我が道を行ってる感じでした。
この頃には横浜アリーナのロビーは難民キャンプ状態で、至る所で若者が寝ており、ゴミも散乱し、かなりひどい有り様でした。来年の開催に支障がなければいいけどねぇ。もっとも、97年のフジ・ロックの惨状に比べればはるかにマシだったけど。
すっかり外は明るくなってきた。
6時ぴったりにフミヤのプレイ終了。DJステージとLiveステージを分けたためか、大規模なイベントとは思えないほど、タイムテーブル通りに進行しました。
最後は卓球とウエストバムが登場し、観客に一礼します。客はアンコールを求めましたが、卓球は引っ込み、そのまま終演。たしかにコンサートじゃないんだから、アンコールなんて必要ないとは思うけど、ちょっと残念でした。
イベントの運営(食べ物・飲み物の販売とか)に関しては多少問題があったとは思いますが、音楽面では最高でした。DJ、ライブ、サウンド・システム、照明、映像、全てが一流のクオリティ。石野卓球のこだわりと信念が感じられたいいイベントでした。こりゃもう来年もやるしかないでしょ!