ディスク・レビュー 2000年2月


artist

Joao Gilberto

title

Joao voz e violao

label

UNIVERSAL (2000)

 カエターノのプロデュースによるジョアン・ジルベルトの新作。タイトル通り「ジョアンの声とギター」のみ。しかし、そのシンプルな音の中に音楽の素晴らしさの全てが詰まっている。
 「ボサノヴァの法王」アントニオ・カルロス・ジョビンは、私がブラジル音楽に興味を持ち始めた頃、天国へと旅立ってしまった。しかし、「ボサノヴァの創造主」ジョアン・ジルベルトは、今も40年前と変わらぬ瑞々しい歌とギターを聴かせてくれる。その幸せに感謝すると同時に、この企画を実現してくれたカエターノ・ヴェローゾに心からのリスペクトを。


artist

Gal Costa

title

canta Tom Jobin ao vivo

label

BMG BRAZIL (1999)

 こちらもブラジル音楽界の大物、ガル・コスタによるアントニオ・カルロス・ジョビンへのトリビュート・ライブ2枚組。気になるのは、ガルのボーカルが本調子じゃないのかな?と思える点で、なんか声が荒れているような気がする。また、バックの演奏も非常にオーソドックスで、大人のポピュラー音楽という風に聴こえなくもない。ま、カエターノのライブのような革新性を他の人に求めるのは酷というものか・・・
 しかし、ジョビンの曲の素晴らしさでそんな不満は帳消しという感じ。本当に偉大な作曲家です。


artist

PAULINHO MOSKA

title

MOBILE

label

EMI (1999)

 宮沢和史のアフロシックにも参加していたパウリーニョ・モスカの新作。プロデュースはやはりマルコス・スザーノ。レニーニのようなボーカルの強烈な個性がないのが残念だけど、エレクトリックなサウンドと生のギターやパーカッションが絡み合うプロダクションはさすがの一言。世界の最先端を突っ走るブラジル・ロックの好調さがよく分かります。


artist

ana carolina

title

ana carorina

label

BMG BRAZIL (1999)

 こちらはマルコス・スザーノが演奏面でバックアップした女性シンガー。新人なのか詳しくは分からない。ジャケット写真は美人の白人女性なので、さわやかなボサ系のシンガーかと思ったら大間違い。野太く、パーカッシブなボーカルは一瞬男性かと思うほど。黒人ソウルシンガーに近い。
 サウンドはほぼ完全に生演奏で、パウリーニョ・モスカのようなエレクトリックな仕掛けはないけれど、ストレートな演奏と歌にはファンクネスが感じられる。ダニエラ・メルクリともマリーザ・モンチとも違う新しいタイプのシンガーだと思う。イケます。


artist

VA

title

BRAZILIAN LOVE AFFAIR

label

FAROUT (1999)

 イギリスのクラブ系レーベルによるブラジル音楽のコンピレーション。6、7年前、ジョイスがクラブでブレイクした時期がありましたが、あれはこのFAROUTレーベルのオーナー、ジョー・デイビスが一枚絡んでいたらしい。その伝説のロンドンでのジョイスのライブも2曲収録。
 クラブの視点でのブラジル音楽なので、ドラムンベースとの近似性を感じさせる曲が中心。竹村延和によるリミックスもさりげなく収録。なんか聴いたことのある曲があるなと思ったら、私が持っている“MISTURADA2”というリミックス・アルバムからも1曲収録されていました。あれはこのFAROUTからリリースされたものだったのだな。


artist

VA

title

brazilian beats

label

Mr.Bongo (1999)

 これもクラブ系のブラジル・コンピレーション。このMr.Bongoというレーベルは過去にバトゥカーダ物のコンピを数枚リリースしていますが、今回はフュージョン系、ファンク系も含めた幅広い選曲。アイアート・モレイラ、ジョルジ・ベンといった有名アーティストから、Boogaloo Comboというよく分からんバンドのJBのカバーまで、フロアを踊らせるためのセレクトといういう感じで、マスターズ・アット・ワークもリミックスで参加。
 この手のコンピは家で聴いてもあまり面白くないのですが、このCDはなかなか楽しめます。クラブに興味がないブラジル音楽ファンにもおすすめ。


artist

電気グルーヴ

title

VOXXX

label

Ki/oon (2000)

 圧倒的なサウンド・クオリティと言葉の毒気(笑)、これはたまらん!
 日本人であることの意味、電気グルーヴという存在の意味。DJとして世界を渡り歩く石野卓球には、今や全てが見えているのだろう。まりん脱退によって、あのソフィスティケイトされた味が無くなってしまったのは残念だけど、卓球とピエール瀧という電気グルーヴの「核」の2人が残ったことが本当にプラスに働いている。
 前作“A”をリリースした後は「もしかすると解散しちゃうんじゃないか?」と思ったけど、今はそんな心配はいらないだろう。彼らの暴走はもう止まらない。


artist

PRIMAL SCREAM

title

XTRMNTR

label

Creation (1999)

 ケミカル・ブラザーズ以降のロックとテクノを融合したダンスミュージックにトドメを刺す一発。
 強烈なダンスビートに乗る歪みまくったサウンドは、マイ・ブラッディ・バレンタインもビックリと思ったら、御本人ケヴィン・シールズが参加しております。他にもエイドリアン・シャーウッド、元ヤング・ディサイプルズのマルコ等々、多彩なゲストが参加しています。
 アルバムごとに違ったスタイルを見せる彼らですが、やはりプライマルとしか言いようのない個性はさすが。この混沌としたサウンドをライブでどう聴かせてくれるのか、夏のフジロックが楽しみです。


artist

KRAFTWERK

title

EXPO2000

label

EMI (1999)

 まさかクラフトワークの新譜が出るなんて! やはり2000年という時代の幕開けには黙ってはいらない、とうことか。ミックス違い4曲収録のシングルです。
 まぁ、「あの伝説のクラフトワークの」という感慨はあるけれど、純粋に曲として聴くと大したことはない(笑)。確かにクラフトワークにしか出せない味があるけど、世界のミュージック・シーンに何か影響を与えるほどの曲かというと、そんなことはないだろう。


artist

椎名林檎

title

罪と罰 / ギブス

label

東芝EMI (2000)

 今、日本で最も勢いのあるアーティストは椎名林檎だろう。今回の同時発売マキシ・シングルも凄すぎる。あまりに人気が加熱し過ぎているのが心配だけど、これだけ魂のこもったボーカルとサウンドを聴かせられれば、誰でも虜になるわなぁ。発売日に新潟のタワレコに行ったら2枚とも売り切れていたもんな。
 「君の瞳に恋してる」と沢田研二の「東京の女」というカバーのセンスもたまらん。


artist

hiro

title

Bright Daylight

label

Toy's Factory (2000)

  3月31日のSPEED解散を控え、一番先に動き出したのは意外にも寛子ちゃん。解散発表の時はしばらく休養という雰囲気だったので心配していましたが、男よりも歌をとってくれたようで(笑)、安心安心。
 このシングルはいいですよ。曲も演奏もハイグレード。ベースの青木智仁、トランペットのヨーカン等、ツアーメンバーによる演奏は素晴らしいグルーヴを出しています。
 hiroのソロでも十分かっこいいけど、SPEEDにもっと早くこんな曲を書いて歌わせて欲しかったよ、伊秩弘将さん。


artist

倉木麻衣

title

Love, Day After Tomorrow

label

GIZA (1999)

 宇多田ヒカルの二番煎じなのは明らかな女性シンガーですが、曲は結構いい。ロングヒットになっているのも納得できます。
 しかし、宇多田ヒカル以降、R&B系の女性シンガーというのは雨後の竹の子の如く出現していますが、ここまで宇多田ヒカルのコンセプトをコピーしている企画は他にないだろう。倉木麻衣本人は十分才能があると思えるだけに、このGIZAというレコード会社はどういうつもりで売り出しているのか、知りたい気がします。


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