ディスク・レビュー 2000年10月


artist

MIXTUAL

title

MIXTUAL

label

LUXURY RECORDS (2000)

 新潟のクラブprahaのパーティー「BODY MUSIC」のDJ Moriokaと「K.A.O.S」のDJ YOSHIIによるユニットのアルバム。ボーカル、ラッパー、ミュージシャンはもちろん、エンジニアリング、マスタリング、アートワークまで、全て新潟で制作した意欲的な作品。8月にD.U.B.と対バンでライブを行ったバンドのメンバーも参加しています。
 インディーリリースですが、ディストリビューションは全国なので、タワーやHMVのような大手ならどこでも入手可能なはず。地方でもハイレベルの音楽制作が出来るという、いい見本です。
 テレビ新潟のクラブ情報番組「Party Line 2001」の音楽としてもオンエア中。


artist

fra-foa

title

青白い月

label

TOY'S FACTORY (2000)

 仙台発、5月にメジャーデビューしたfra-foaの第2弾マキシ・シングル。アマチュア時代のデモテープにも収録されていた代表曲をついにリリース。エンジニアリングはなんとスティーヴ・アルビニ! ずばり勝負曲でしょう。
 ボーカル三上ちさ子の幼くして亡くなってしまった兄を歌った曲。荒削りのボーカルではあるけれど、そこから溢れ出す感情と、歪んだギターサウンドとの相乗効果は素晴らしく感動的です。
 これを超える曲を今後作り出すことが、彼らの最大の課題でしょう。がんばってくれ。


artist

ORIGINAL LOVE

title

ビッグクランチ

label

PONY CANYON (2000)

 田島貴男は、ついにここまでブッ飛んでしまったなぁという新作。ホントに訳わからんよ(笑)。
 本人は悪ノリしすぎ、というくらいノリノリで作っているのは非常によく分かる。緻密な曲作りの技巧を極めてしまった田島が、AKAI MPC-2000やYAMAHA SU-700のような単体シーケンサーを使って、偶然性を生かしたレコーディングにたどり着いてしまったのもよく分かる。しかし、アウトプットとして出てきたサウンドは、とりとめのないアイディア集でしかないと思う。私の耳に残る曲は一つもない。
 歌詞の支離滅裂さも相当のレベル。クスリで逮捕されることのないよう祈るよ、マジで。


artist

角松敏生

title

存在の証明

label

IDEAK (2000)

 解凍後の角松敏生、入魂の作品。打ち込みサウンドを極力排し、アコギを中心とした生演奏で、スティーヴ・ガッド、ヴィニー・カリウタ、デビッド・サンボーンといった凄腕ミュージシャンを贅沢に使っています。歌詞も非常に攻撃的で、一見ラブソングのようでも、ただの愛の歌ではない屈折した視点がある。
 最初の2曲くらいは「あれ?」という感じだったけど、中盤から俄然調子良くなってくる。特に“煩悩Rolling Stone”“浜辺の歌”あたりは、スティーリー・ダンの新作並みのクオリティーの高さだろう。
 角松のアルバムでは、久々に素直にいいと思える作品。しかし、セールスでは苦戦しているらしい。結局、サウンドのクオリティーだけでは若いリスナーへの訴求力はない、ということなのだろう。難しい問題です。


artist

青木智仁

title

EXPERIENCE

label

ビクターエンターテイメント (2000)

 角松バンドを支えるベーシストにして、日本のトッププレイヤー、青木智仁の久々のソロアルバム。
 楽器のプレイヤーがソロを作る時、常に課題となるのが、アーティストとして全体的な曲作りを優先するか、プレイヤーとして弾きまくるか、ということだろう。今作は前者の作りで、ベースは割と控えめ。ホーンが炸裂する曲が多く、実は本田雅人が一番目立っているアルバムかもしれない(笑)。
 青木ファンとしては、やはりスラップ大爆発のプレイをたっぷりと聴きたい気がします。マーカス・ミラーの“The Sun Don't Lie”のように、ベースを弾きまくりつつ、音楽的なアルバムを期待したいところです。


artist

NOBU CAINE

title

encore

label

Amvox Group (2000)

 これまた、角松敏生関連盤。パーカッションの斉藤ノブを中心に、村上ポンタと島村英二のツインドラムをフィーチャーしたフュージョンバンドで、メンバーは角松のツアーやレコーディングでお馴染みの面々。青木智人も参加。
 クラブ系のサウンドに色目を使ったようなアプローチもありますが、成功しているとは言い難く、根っからのバンドマンである彼らの限界も見える気もしますが、日本を代表するスタジオ・ミュージシャン達のハイレベルな演奏を素直に楽しむべきでしょう。
 角松本人はプロデュースではなく、ゲスト・ギタリストとして参加しております。


artist

久保田利伸

title

As One

label

SME Records (2000)

 6月にリリースされたアメリカ盤“nothing but your love”に続き、日本向けに制作された久々の新作。サウンドもボーカルも「ニュー・クラシック・ソウル」系で抑制的だったアメリカ盤に比べ、自由に作った国内向けはボーカルが前に出ています。
 昨今のR&Bブームの先駆者とも言える久保田ですが、小柳ゆきや倉木舞衣に比べるとやはり地味。これが本物の味なんでしょうが、渡米前のキャッチーなメロディーや泣きのバラードが懐かしかったりもします。


artist

オ-サカ=モノレール

title

WHAT IT IS...WHAT IT WAS

label

Mirrorball (2000)

 その名の通り、大阪の9人組ファンク・バンド、というか、JBの完コピ・バンドと言っても過言ではない(笑)。ここまでJBマナーの演奏を完璧に身につけていれば、それはそれで大したもんだ。
 どこかで聴いたことのある曲を「オリジナル曲」と称していいかは疑問ですが、大阪らしい濃いバンドです。JBファンなら聴いておいて損はない。


artist

SEIGEN ONO

title

WHO IS SHE? ME?

label

SAIDERA RECORDS (1999)

 小野誠彦の1999年作品。本人のギター、ピアノにヴィニシウス・カントゥリア、五十嵐一生等の演奏を加え、サイデラ・スタジオのミックス技術を駆使して作り上げられています。ナチュラルでありながら、エクスペリメンタルな楽曲は、アストル・ピアソラに通じるものがあると思う。
 ブラジル音楽を基本に、ジャズでも音響系でもない、独特の音世界が美しい。


artist

94 EAST featuring PRINCE

title

THE EARLY YEARS

label

CHARLY (1999)

 デビュー前のプリンスが参加していた「94 EAST」というバンドの再発盤。おそらく1976年前後の録音のはず。
 「どうせ、ショボい音のデモ録音だろ!?」と思って聴き始めたら、大間違い。初期のプリンスにモロに通じるエレクトリック・ファンクで、クオリティは非常に高い。プリンスらしいコーラスワークはもちろん、ギタープレイも絶好調。当時はリリースされなかったというのが不思議なくらいです。
 リハーサルで録られたらしい「ショボい音のデモ録音」もあるのですが、それも驚くほどの演奏力の高さ。天才プリンスの早熟ぶりに唖然とさせられます。プリンス研究家ならマスト・アイテムです。


artist

UNDERWORLD

title

EVERYTHING,EVERYTHING

label

JBO (2000)

 ついに出たアンダーワールドのライブDVD。8月にCD版は既に発売になっていましたが、映像付きで見る彼らのライブはやはり格別。TOMATOによる素晴らしい映像をバックに、「ライブ」演奏する世界最高のエレクトリック・バンドの頂点を捉えた作品。音楽物DVDのキラーソフトでしょう。
 残念ながら、ダレン・エマーソンは脱退してしまいましたが、2人組になったアンダーワールドは、これを超えるライブを見せることが出来るのか!? 11月24日のELECTRAGLIDEでの来日公演が楽しみです。


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