ディスク・レビュー 99年10月


artist

椎名林檎

title

本能

label

東芝EMI (1999)

 正直に告白しよう。今の私は椎名林檎様にゾッコン(死語)なのだ(笑)。
 詞・曲・サウンド・ジャケット、全て最高。3曲入りのマキシシングルですが、3曲とも全く曲調が違っていて、幅広い才能が大爆発しています。いやぁ、ホントに最高だから、みんな聴いてくれ。


artist

上原多香子

title

Come close to me

label

TOY'S FACTORY (1999)

 SPEEDファンとしては買わざるを得ないんだけど、これはちょっと・・・
 この脱力するアイドル歌謡は、河村隆一が完全に狙って作っているんだろうけど、う〜ん、キツイ! さすがの私もそう何度も聴けんよ。
 SPEED解散後もまだシングル出すのかなぁ? 美形だけど、歌も演技も全然ダメな多香ちゃんは、これからどうなっていくのだろう? 結構心配。


artist

Everything But The Girl

title

Temperamental

label

Virgin (1999)

 “AMPLIFIED HEART”以降、ダンスビートに接近していたEBTGですが、ついに決定打を放ってくれました。
 前作“WALKING WOUNDED”ではSpring Heel JackやHowie B の力を借りていましたが、今回はほぼ完全にベン・ワットによるプロダクション。スムーズなダンスビートとトレイシー・ソーンのボーカルが融合したサウンドは非常に美しい。D.U.B.の曲作りの上でも大変参考になりますな。


artist

JUNGLE BROTHERS

title

V.I.P.

label

V2 (1999)

 USヒップホップのCDを買ったのはすごく久しぶりで、しかも恥ずかしながらJBEEZを聴くのは初めて。結局、私にとってのヒップホップはパブリック・エネミーとボム・スクワッドの時代で止まっているのもしれない(笑)。
 ともかく、あのプロペラ・ヘッズのアレックスをプロデューサーに迎えた異色作。でも、英国産ビッグビートとJBEEZのパーティー・ラップはなかなか相性がいい。私は80年代後半のプリンスの絶頂期を思い出しました。
 ダンサブルで楽しいサウンドで私は好きだけど、この音はUSの黒人達には受け入れられるのだろうか? 


artist

LEFTFIELD

title

rhythm and stealth

label

Hard Hands (1999)

 名前だけは知っていたけど、実際に聴くのはこの4年ぶりというセカンド・アルバムが初めて。日本では無名だけど、海外では評価が高い、ということですが、確かにこれはカッコいい。テクノ、ダブ、エレクトロ等々の要素がミックスされたサウンドのクオリティは非常に高い。
 アンダーワールドやケミカル・ブラザーズに比べると地味かもしれませんが、ダンス・ミュージック好きにはマストな1枚。大推薦です。


artist

Hi-BISCAS

title

デビル温泉

label

Hyasynth Records (1999)

 GROOVE TRACKSのオーディションでD.U.B.とともに入賞したハイビスキャス(別名BOB STATE)の自主制作ミニアルバム。タイトルはイロモノですが(笑)、内容は本格的なブレイクビーツ・ミュージック。テクノ系のアマチュアには気取った連中も多いので、彼らの「笑い」と「音楽」を両立させようとする姿勢はなかなか貴重です。「デビル温泉」というセンスがたまらん。
 通信販売の申し込みは彼らのホームページからどうぞ。


artist

DUB SYNDICATE

title

Live At The Town & Country Club 1991

label

ON-U Sound

 ON-Uが誇る世界一のダブ・バンドの1991年のライブ。リリース年が不明なんですが、CD-EXTRAになっていて、レーベルのディスコグラフィーや、アーティストのバイオグラフィーが収録されているので、最近リリースされたものと思われます。「なんかインドな音が加わっているなぁ」と思ったら、なんとパーカッションにはタルヴィン・シンが参加。
 当然ライブ・ミックスはエイドリアン・シャーウッドで、貫禄ある生ダブを聴かせてくれます。


artist

ARTO LINDSAY

title

PRIZE

label

avex trax (1999)

 私が敬愛してやまない半分ブラジル人・半分ニューヨーカーのアート・リンゼイ。坂本龍一のgutレーベルを離れ、新作の日本盤はなんとエイベックスからのリリース。
 最近の作品はレコ屋のブラジルコーナーに置いてあるのがしっくりくるようなサウンドでしたが、今回はブラジル色の濃さにプラスして、リズムのグルーヴとストリングスやホーンの繊細なアレンジが更にパワーアップ。本人得意のノイズギターも炸裂し、全くジャンル分け不能というか、ロック、ブラジル、アバンギャルドのどのファンが聴いても満足できる内容となっています。カエターノの近作と甲乙つけがたいほどの出来。


artist

小松亮太

title

来たるべきもの Lo que vendra

label

Sony Music Entertainment (1999)

 日本でバンドネオンと言えば、この人。ピアソラ絡みで世に知られるようになったわけですが、今回の作品はピアソラ50年代の大編成タンゴ楽団時代の曲を中心に、9人編成のバンドで演奏するという企画。小松亮太のレギュラーバンドを中心とするメンバーによる演奏は素晴らしく、日本人による演奏とはとても思えないほど。いや、むしろ90年代の日本人だからこそ、こんなにも美しいタンゴが演奏が出来るのかもしれない。
 ピアソラ以外のタンゴ作曲家(ダイハツの車のCMソングもあり)の作品も取り上げていますが、このバンドの華麗なオーケストレーションで演奏されるとピアソラの曲と遜色なく聴こえます。ともかく、ピアソラの精神を受け継いだ若き日本人を我々は誇りに思うべきでしょう。「タンゴになぞ興味がない」という人も是非!


artist

NINE INCH NAILS

title

THE FRAJILE

label

NOTHING (1999)

 鳴り物入りという感じでリリースされたNINの新譜。2枚組というボリュームで吐露されるトレント・レズナーの孤独と絶望感は圧倒的といえる。かなりテクノ色が強まっていて、大部分はコンピューターで作り上げたものらしいが、テクノ・ミュージックの持つ匿名性・開放感とは正反対のサウンド。「インダストリアル・ロック」という言葉から想像される通りの音なので、はっきり言って新鮮味はない。
 この暗く歪んだ音楽がアメリカで熱狂的に受け入れられるということは、それだけアメリカ社会も病んでいるということなのだろう。


artist

MILES DAVIS

title

AGHARTA

label

CBS SONY (1975)

 エレクトリック・マイルスの頂点と言われるライブ盤。P.ファンクとJBとジミヘンをごちゃ混ぜにしたようなグルーヴは悶絶です。エレクトリック・ミュージックに関わる全ての人間が聴くべき。我々が目指している音楽の究極の姿を、1975年の時点でマイルスは既に表現した、という事実に愕然とさせられる。99年のアンダーワールドよりも75年のマイルス・バンドの方がはるかに先を進んでいるのだ。
 ちなみに、1975年2月1日の大阪公演の昼の部を収録したので「アガルタ」、夜の部を収録したのが「パンゲア」。これはもう「パンゲア」も当然買わねばならない。


artist

Yellow Magic Orchestra

title

YMO GO HOME

label

東芝EMI (1999)

 細野晴臣監修によるベスト盤。実は私はYMOのレコードは1枚も持っていない。坂本龍一も細野晴臣も好きだけど、なぜかYMOはあまり好きではないんだよね。その感覚はこのベスト盤を聴いてもやはり変わらない。「インテリが狙って作っている」という感じがどうにも好きになれないんだな。ま、そんなこと言ってるから、いまだにまともなテクノが作れないのかもしれないけど(笑)。
 改めて聴き直してみると、YMOの曲はテクノというよりニューウェーヴとして非常に完成度が高かったということが判る1枚。


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