James Brown

デビュー50周年記念コンサート

2006年3月4日(土) 東京国際フォーラム ホールA


10年ぶりのミスター・ブラウン

 JBのライブを観るのはなんと10年ぶり。1997年11月7日・日本武道館のレポートを読み直すと、「声も動きも今イチ」とか「そろそろ寿命」とか失礼なことを書いてますねぇ(苦笑)。
 まぁ、10年前の時点で60歳を過ぎていたのだから、アーティストとのしてのピークを過ぎていたのは間違いないわけですが、その後「ジェームス・ブラウン愛好家」のbop-gunさんと知り合いになって感化されたところもあり、久々に観に行く気になりました。
 なんとなく、最後の来日になるかも?という予感もしていたし。

 入場前に国際フォーラム内の喫茶店でbop-gunさん、DJ KSKさん、DJ ABIさんと集合。GO-GOのライブCD-Rを渡したり、bop-gunさんから噂の「ブラウン手拭い」を頂いたり、ビールを飲みながら、軽くミーティング。全公演を追っかけているbop-gunさんから、貴重なお話を色々とお聞きしました。


これが噂の「ブラウン手拭い」

 ホール入口へ向かって歩いていると、「ジェームス・ブラウンはこちら」というプラカードを持ったバイト君を発見。すかさず「写真を撮っていいですか?」と声をかけるbop-gunさんに、バイト君は意味が分からずポカンとしていました(笑)。ブラウン来日の全てを記録しようとするbop-gunさんの気迫(?)には頭が下がります。

  

 入場してみると、やはり年齢層は高いですね。ブルース・ブラザーズのコスプレ(?)のオッサンを発見して、爆笑してしまいました。

 ジョアン・ジルベルトやカエターノ・ヴェローゾは趣味の良さそうなオジさんが多かったけど、今回はナツメロ的な雰囲気のオバさん層もチラホラ。若い頃はディスコを荒らしていたのよ、という感じでしょうか。ベンチャーズの日本ツアーってこんな客層かも?なんて、失礼ながら思ってしまいました。
 残念ながら、20代の若者はあまりいなかったですね。僕ら30代半ばの人間は、JBP-FUNKがヒップホップのサンプリング・ソースとして再評価された時期に、ちょうど大学生だったわけで、JBの全盛期をリアルタイムで知らなくても、JB=黒人音楽の神様というのは常識なんですが、今の若者にとっては、そうでもないんですかねぇ?
 サンプリングの著作権が厳しくなったりとか、HDレコーディングが普及して、サンプリングという技術自体が廃れてきたりというご時世が、JBへのリスペクト事情にも影響しているのかな、なんて思いました。


72歳のハーデスト・ワーキングマン

 定刻の18時を10分ほど過ぎて、バックバンドのソウル・ジェネラルズが登場。ドラム、ベース、ギターのリズム隊が2組、さらにパーカッションにホーン隊が3人という大所帯。97年のライブでは、2組のリズム隊が交代で演奏し、ツインドラム&ベースで演奏したのは最後の“Sex Machine”のみ、という謎の編成だったのですが、今回は半分くらいの曲でツインドラム&ベースで演奏していたようです。さらに女性コーラス隊のビター・スウィーツが4人、途中から女性ダンサー2人が加わり、RJという黒人男性もボーカルでJBをサポート。総勢17人というとんでもないバンドです。
 バンドの演奏に乗せて、数々のヒット曲名を連呼するお馴染みのオープニングMCでは、最初はダニー・レイがステージに姿を現さず、「まさか来ていないのか!?」と一瞬心配になりましたが、大丈夫でした。ダニー・レイがステージに登場した時点で、会場は異様な盛り上がり。ミスター・ブラウンを紹介できる男はやはり彼しかいない。
 「ジェェェ〜〜〜イムス・ブラァァ〜ウン」というダニーの声と同時にステージに現れたミスター・ブラウン真っ赤なスーツ。黒いスーツのソウル・ジェネラルズとの対比が鮮やかだし、ステージに現れるタイミングも絶妙。何十年とジェームス・ブラウン・ショーを共にしているダニー・レイとの芸の奥深さに涙が出そうになりました。

 既に70歳を越えているブラウンですが、10年前のライブと印象はほとんど変わらない。ステップも踏むし、マイク・アクションもバリバリで、とても70代のジイさんとは思えない。もちろん、マント・ショーも健在。
 10年前と変わったことというと、日本人ダンサーが登場して、JB風のダンスを披露したところと、日本語の通訳を介して、メッセージを伝えたところ。
 「世界のあちこちで戦争が起こっている。世界には愛が必要だ。今、皆さんの右にいる人に愛している、とささやいてください。」
 いや〜、もっともなメッセージだけど、なんか氣志團のネタみたいだな(笑)。観客がとまどっていると、「皆さんには愛が足りないようですね。」と言われ、会場中失笑。世界のどこでも自分のショーのスタイルを貫く人だと思っていたので、日本に合わせた演出は意外でしたね。

 そして、この日はとんでもないハプニング発生。
 私は1階席の一番後ろから2列目の席だったので、最初はよく分からなかったのですが、“PLEASE, PLEASE, PLEASE”の途中でブラウンのマイク&スタンドを交換したと思ったら、ブラウンが「音が出ないよ」と身振りで言っている。トラブルマイクを交換したのに、新しいマイクもダメだったようで、ステージ上手のスタッフ達の動きが慌ただしくなる。が、ブラウンは何事も無かったかのように、オルガンに向かい、インストの曲を演奏開始。
 メンバーがミスをすると罰金をとることで名高いブラウンだから、この時の日本人スタッフは「罰金どころか、黒人ボディガードまでとられるんじゃないか?」とさぞやビビったでしょうなぁ(笑)。インストの曲で繋いでいる間に、無事に別のマイクが調達されると、会場から拍手が。

 ライブの最後はやはり“Sex Machine”。これは10年前から変わらない。ていうか、30年くらい変わってないと思う(笑)。この曲では、ボーカルのRJが大活躍でした。
 演奏終了後はRJが「Do you want more? James Brown!!」と観客を煽りましたが、すぐに客電が点いて、ライブ終了。あの最後のRJのテンションはなんだったのでしょうか?
 セットリストとメンバー名はbop-gunさんのサイトを参照してください。


今はさらばと言わせないでくれ

 ともかく、とても72歳とは思えないパワフルなステージでした。JBは不死身だ、と改めて感心しました。
 しかし、翌日のツアー最終公演では、「日本に来るのは最後かもしれない」と語ったとか。bop-gunさんから「オフレコ」と言われたので詳しくは書きませんが(と言っても、吉岡正晴さんが日記に書いてしまってますが)、ブラウンの体調にはショッキングな情報もあるようです。
 あのジイさんは、絶対ステージの上で人生を終える運命なのだと思う。病院で死ぬようなタマではない。
 その前に、もう一度来日してくれ。絶対に観に行くから。

 



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