まずは3年ほど活動休止していたTHE BOOM、久々の復活ライブ。
現在の宮沢和史のワールドワイドな活動があるのも、THE BOOM時代に沖縄やアジアの音楽に出会い、さらに「極東サンバ」でブラジル音楽にのめり込んだのが原点だ。ブラジル音楽フェスタでもあるこのイベントでは、どういう演奏をするのか、興味津々でしたが、1曲目は“不思議なパワー”。サポートはキーボード1人のみで、その後も、大編成化する前の初期ブーム時代の曲が続いて、ちょっと拍子抜けしてしまいました。
確かに、ブラジル音楽とのミクスチャー路線は、GANGA ZUMBAに引き継がれてしまったので、THE BOOMでは原点に返って、こういうシンプルな演奏をするしかないのかもしれないが、これがブラジル移民100周年イベントにふさわしいライブなのかは非常に疑問。シンプルにいいメロディーの曲ばかりチョイスしていたので、いい演奏ではあるのだが・・・。
01.不思議なパワー
02.星のラブレター
03.中央線
04.僕にできるすべて
05.この広い世界で
06.神様の宝石でできた島
07.24時間の旅
「これまでの100年、これからの100年をかけてみたら、10,000になった。1万人集めよう!と打ち合わせでは盛り上がった(笑)」そうですが、無事に整理券は1万人を超えたとのこと。
久々に“神様の宝石でできた島”をライブで聴けたのは嬉しかったが、やはり名曲“風になりたい”こそ、「1万人のサンバ大会」で合唱したかった。それだけが無念。
元ブラジル文化大臣、10年ぶりの来日。もう66歳ですが、歌にも動きにも全く衰えは感じさせない。
バックバンドはギタリストの息子を含む6人編成で、父親の世代と息子の世代を半々でミックスしており、キレのあるリズムと、アナログ・シンセをブリブリいわせるプロダクションは非常に現代的で演奏テクニックもある。ま、「ブロードバンド・バンド」というバンド名はダサいとは思ったが(笑)。
Gilberto Gil(歌、ギター)
Arthur Maia(ベース)
Alex Fonseca(ドラムス)
Sergio Chiavazzoli(ギター)
Bem Gil(ギター)
Claudio Andrade(キーボード)
Gustavo di Dalva(パーカッション)
鳥の鳴き声みたい声で、観客とコール&レスポンスをしたり、とても60代の大物アーティストとは思えないお茶目な面も見せてくれました。
また、「ブラジルの一番有名な曲をソフトなレゲエ・サンバ・ボサノバ風に」と言って“イパネマの娘”をエキゾチックで不思議なアレンジで演奏。さらにボブ・マーリーの“No Woman No Cry”をカバー。
このライブが無料とは、なんと贅沢なことか。
この夏2度目のGANGA ZUMBA。WORLD HAPPINESSの時は、ブラジル勢2人が欠席でしたが、今回はキーボードのフェルナンド・モウラは参加。しかし、マルコス・スザーノの不在は痛い。「1万人のサンバ大会」でこそ、あのパンデイロの妙技を炸裂させてほしかったのだが・・・。
01.ちむぐり唄者
02.HABATAKE!
03.Berimbau
04.MARIA BONITA
05.楽園
06.足跡のない道
07.シェゴウ・アレグリア!〜歓喜のサンバ〜
08.BRASILEIRO EM TOQUIO(ブラジル人・イン・トーキョー)
09.DISCOTIQUE
“Berimbau”では、ジルのバンドからパーカッションのGustavoが本物のビリンバウを持ってゲスト参加。終盤では大御所のチト河内も参加していました。
そして、今回のライブの目玉はブラジル移民100周年のために作曲した“足跡のない道”。しみじみとしたいい曲です。小学校の教科書に載ってもおかしくないくらい普遍的なメロディーが宮沢和史らしい。
一番盛り上がるのは、相変わらず1stシングル“HABATAKE!”と2ndシングル“DISCOTIQUE”で、ライブのクライマックスが固定化しているのがちょっと心配ではありますが、“DISCOTIQUE”はやはり破壊力抜群。踊らずにはいられない。
アンコール“島唄”の演奏は、GANGA ZUMBAとTHE BOOMが合体。ツインギターにツインベース、ドラムはさすがに2人は無理なので、THE BOOMの栃木さんはスルド(ブラジルの大太鼓)を担当。(この編成で、年末には紅白歌合戦に出演しました。)
“島唄”のイントロが、THE BOOMの小林孝至の歪んだギターで奏でられると、何度聴いても鳥肌が立つ。やはり、このフレーズは高野寛ではなく小林孝至が弾くべきだ。
ブロードバンド・バンドのメンバーもステージに登場し、もちろんジルベルト・ジルはボーカルで参加。
あのジルが“島唄”を歌い始めた瞬間、もう目頭が熱くなった。カエターノ・ヴェローゾとともにトロピカリズモという音楽の革命を起こしたあのジルベルト・ジルですよ。ブラジルの伝説的なアーティストが、ついに“島唄”を歌うという歴史的な瞬間に居合わせただけでも、音楽ファンとして最高に幸せだ。
慣れない日本語の歌詞のはずですが、ジルベルト・ジルは堂々とした歌いっぷり。宮沢とお互いの胸を拳で叩き合いながらの熱唱で、もちろん観客も大合唱。過去に何度も何度もライブで聴いた“島唄”だが、この日の“島唄”の味わいは格別だった。
宮沢和史にとっても、最高の瞬間、最良の一日だったことだろう。